2011年10月10日

【足立社長列伝】 第4回 デザインアンダーグラウンド 松崎順一氏 <前編>

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▼ 知る人ぞ知る“アンダーグラウンド”な足立区の秘境

ここは足立区南花畑。
昭和を思い起こさせるレトロな団地が並ぶ商店街の一角に怪しくたたずむ黒塗りのスペース。
ここが「家電蒐集家」「レトロフィッター」を自認する
松崎順一氏のファクトリー“デザインアンダーグラウンド”である。

デザインアンダーグラウンドとは、
1960年代〜1980年代のレトロなラジカセ・家電を蒐集して文化発信活動を行っている、
文字どおりアンダーグラウンドなプロジェクトである。

その活動内容は、家電の修理・販売・書籍の発行・ショップディスプレイ・
レトロ家電をテーマにしたイベントの開催など、
ありとあらゆるクリエイティブな方向に及んでいる。

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足立区然とした殺風景な団地。この団地の一階こそがデザインアンダーグラウンドの本拠地である。


インテリアデザイナーだった松崎氏がデザインアンダーグラウンドを立ち上げたのは2003年。
会社を辞めて何をするというあてがあるわけでもなく、
40過ぎて自分の好きなことをやらないと人生が終わってしまうという危機感からであった。

「普通に会社員をやっていると30代の後半から管理職になるんです。
 もうデザインの一線から離れて、後輩の育成が重点になる。それが非常につまらなかったんです。
 好きな家電をどういう形で何をやるか暗中模索の中で会社辞めてしまって。

 もともと私は古いものが好きだったから、
 家電に特化して他の人がやってないような家電の展開ができればなと。

 自分みたいなデザイン畑だと独立して事務所作ったりするけど、
 足立区はそういうロケーションじゃないですし。
 生まれは台東区の三ノ輪で、亀有とか足立区には子どものころからなじみがあって。

 最初は自分の好きなアンティーク家電を集めて西新井の住宅地でお店を開いたんですけど、
 それが鳴かず飛ばずで。8坪くらいの所を間借りして。
 足立区の住宅地に突然そんな店ができて、1年たっても2年たってもうんともすんとも言わなくて。

 そうこうしているうちにいろんな人と知り合って、サイトを立ち上げて
 『そういうことやってるならこういうコトできないか』と言われて、
 ショップの形態から家電を扱ってクリエイティブなことをする方向に。
 3年目くらいからですね、成果が出てきたのは。
 それまでに何百回辞めようと思ったことか。数万円の売り上げの月もありましたし」。

デザインアンダーグラウンドの立ち上げから現在にいたるまでの経緯を松崎氏は感慨深く、
そして実に楽しそうに語ってくれた。

その屋号とは裏腹に「実にバイタリティにあふれた人だな」という印象を受けた。
そういうわけで、今回の足立社長列伝は
インタビューの熱気をできるだけ忠実に感じ取ってもらいたく会話形式でお届けする。


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--どうやってこんなにたくさんのラジカセを集めてくるんですか? 
 お話しできる範囲でいいので教えてください。


松崎「僕が集めてくるのは通称“ヤード”って呼ばれてるところです。
 古い家電を積んで町中を走ってる軽トラ。あれがどこ行くのか考えたことありますか? 
 買い取ってくれる業者がいるんですね。
 いらなくなった家電を集めて粉砕して鉄の塊にして資源として再利用したり、
 あとは古いPC集めて都市鉱山じゃないですけど基板だけ抜いて中国で精錬して金だけにするとか。

 途上国では、ボルトや電圧直せば使える古いテレビや冷蔵庫のニーズがあるんです。
 意外と日本の廃家電って使えるんですよ。
 そういう業者が人里離れたような埼玉、千葉、群馬の田んぼや畑の真ん中に壁を立てて、
 その中で仕分けをしてコンテナに積んで、そこから海外のバイヤーが持って行く。

 ここ20年くらい、平成になった頃からかな、トラックで回収が始まったのがそれくらい。
 そこから古い家電の海外ニーズが高まったんです。
 主に買いに来るのは海外のバイヤー。テレビ50台とか買い付ける。
 日本でも再利用できるものは国内のリサイクルショップが買いに来る。
 地方から出てきてひとり暮らしの学生には好まれますね。

 家電を扱ってるヤードと呼ばれるところに来るのは外人とリサイクルショップの一部の人。
 僕が欲しいものは他のバイヤーが目もくれない。ライバルがほとんどいないんです」。

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--そういう場所に一般人は入れる?

松崎「誰かの紹介とかなら。直接行くと門前払いですね。
 僕は会社辞めたときに古いものの流通の仕組みを学ぶために
 リサイクルショップでバイトしてたんです。
 そこで芋づる式にいろんなルートを調べました。
 個人の方や電気屋さん、独自のルートをひとつひとつ開拓して、
 今では日本中にいくつもあります。

 でも、一番簡単なのは軽トラの後を追いかけること(笑)。
 古いものの流通を押さえて、古い家電はどこで集めるかがキーポイント。
 仕事辞めてまずは古物商の免許取って、いろんな業者さんと知り合って。
 新しい仕入れ先は常に開拓してます」。

--古いラジカセに誰も見向きもしないということは、
 松崎さんがこの活動を始める以前は捨てられてたんですか?


松崎「古いラジカセは海外でニーズがあるけど、僕は海外のバイヤーよりも高く買うんで。
 そこは市場の原理ですよね。
 ツーカーの仲になって、軽トラの業者が持ってる卸値の値段とか全部コピーさせてもらったり。
 ああいう人たちって末端の方なんで、闇から闇に葬られる。
 だから彼らとのコネクションはすごいとってますよ」。

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--これだけWebが発達した現在でも、
 そういった価格の情報はいくらググってもまったく引っかかりませんよね。


松崎「マーケットはあるけど表の世界ではない、ほんと陰の世界。
 だから一度捨てられたものは一般の人の目には触れないんですよ。
 闇から闇へ、コンテナに積まれて持って行かれる。
 草の根で探すしかないんですよ。涙ぐましいまでにいろんなところ当たって。
 飛び込みで入って聞いたり、業者から紹介してもらったりそれの連続で。

 長くやる業者は少ないし、ヤードも何年かたつと急になくなっちゃうんですよ。
 今までの仕入れ先が突然なくなっちゃったり。
 常に新しいところを開拓しないとコンスタントには集まらない。

 こういう活動って本当にアンダーグラウンドなんですよ。
 そのロケーションとしてやっぱり足立区がぴったりだなと。
 足立区の人種とか考えるとアバンギャルドなものはどんぴしゃって感じますね(笑)」。
   
   
▼ レトロな60〜80年代の家電の魅力を広く世に伝えたい

松崎「僕はもともとデザイン関係の人間なんで、メカニックな美しさが好きだったんです。
 インテリアデザインの仕事だったんですけどプロダクトデザインに憧れていて。
 今のプロダクトデザインは洗練されすぎて、どこも同じになってきた」。

--確かに、スマートフォンなんかはどれも見た目は同じですね。

松崎「僕のスローガンは“デジタルは活用、アナログは愛用せよ”なんです。
 僕もMac大好きなんで通常はMacBook抱えてるけど、音楽を聴くのはアナログ。

 僕としては足立区のイメージをすごく変えたいんですよね。
 足立区から世界の最先端に直行するような、ガラっと一新するような。
 そういうクリエイティブな仕事をしたいですね。
 今、編集者の都築響一さんともやり取りしてるんです」。
   
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--ああ、東京右半分でも紹介されてましたね。

松崎「そうですそうです。JWAVEで対談したり、たまに山谷に行ったり(笑)」。

--山谷キレイになっちゃいましたよね。

松崎「あの辺は小さい頃ホームグラウンドだったんですよ。
 三ノ輪から浅草あたりが遊び場で。昔はすごかったんですよ、ホームレスのたまり場で。
 ほんとにあしたのジョーさながらのドヤ街でした」。

--僕は今年の3月まで浅草の今戸に住んでたんですよ。
 で、10年前は千束4丁目、吉原に住んでまして。


松崎「あー、そうなんですか。あの辺は僕も好きですよ。
 下町情緒がぽつんと残ってる街はいいですね。足立区にもありますが。
 家電は下町文化と同じく残すべき日本の文化遺産だと思ってます。
 ミュージアムも近い将来に作りたい。僕が扱ってる家電は全部後世に残したい」。

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整備途中と思われるむき出しのラジカセも。

--そういった目的で伊勢丹とのイベントも継続してるんですか?

松崎「そうですね。伊勢丹とは家電の魅力について若い人に向けたアプローチをしてます。
 今年でもう3回目かな。伊勢丹は他と比べるとユニークで、
 誰もやってないことを真っ先に仕掛けるんです。

 古い家電ってリサイクルショップをイメージさせるせいか、普通の百貨店は毛嫌いする。
 僕らはそこを逆に新しく見せる。インテリアとしてこういう使い方したらもっとかっこいいと、
 新しいカルチャーを提案してる。伊勢丹のバイヤーと意気投合して今年の3月にやって、
 それが好評で5月にもやって、10月からはアート的なアプローチで見せる予定。

 東京デザインウィークのサテライト会場にもなってるんです伊勢丹は。
 僕が考えた家電にまつわるアートピースを展示、販売して、
 アーティストとして自分がデザインウィークに参加するんです。
 今後も伊勢丹の中でやってく予定です」。

--今はどうかわかりませんが、青山のポール・スミス スペースでも古いラジカセを扱ってました。

松崎「一時期ありましたね。
 ポール・スミスがラジカセとか日本のそういったものが大好きで。
 僕が好きなのは外側は古めかしいままで中をハイテクにすること。
 ビンテージのマックの中身を入れ替えて液晶の画面にしたり。
 それができれば10月12日からの伊勢丹の展示に置く予定です」。

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--NIGOが似たようなことやってますね。
 前になんかの雑誌で見ましたが、古めかしいテレビに液晶入れたり。
 あの人もすごいコレクターですし。


松崎「ああ、NIGOさんもコレクターですよね。
 ちなみに、今進めてる企画ってのがラジカセをDJマシンに変えちゃおうという、
 フランスのKITSUNEの依頼なんですよ。
 KITSUNEってファッションと音楽のレーベルも作ってますよね。
 そこでラジカセで演奏するDJマシンをいっしょに開発してて」。

--へえ、その話は向こうから来たんですか。

松崎「KITSUNEの日本人のスタッフの方から来ました。
 フランスと定期的に打ち合わせはやってますよ。
 完成したらKITSUNEのイベントで使って、東京とNYでもやろうと」。


▼ 失われてしまったレトロなデザインの復興に向けて

松崎「今年の秋からスタートして別途Webサイトも立ち上げたんですが、
 レトロフューチャーデザインというプロジェクトでは、
 古いカタログの中でかっこよくてユニークなものをピックアップして、
 京都の青幻舎という出版社から300ページくらいの本を出そうと。

 僕自身のコメントも全部加えて。だから今年はずっと古いカタログを集めてて、
 それを日夜分類してるんですよ。全国回って数万枚集めてきた。
 家電も車もバイクも60年代、70年代、80年代と。今見てもぜんぜんかっこいい。
 それを紹介していく。

 本が完成した際には青山ブックセンター全店でイベントをやることが決まってます。
 実際のカタログも並べて。プロダクトに関しては家電だけじゃなくておもしろいものを。
 好評だったら第二弾、第三弾とやっていきたい。
 今年は震災があったんでラジカセが50台くらい壊れましてね。
 それ以来、メインのラジカセは地震の対策をした千葉の倉庫に移しました」。

--家電アートプロジェクトとしてサイトでも協力者を募集してますね。

松崎「家電だけにこだわるつもりもないんです。
 古くて世の中から消えてしまったものをもう一度リスペクトしたい。いいものは人に紹介したい。
 だからアーティストやクリエイターと組んでなにか仕掛けていきたい。それが自分の仕事です。

 今は平行してジュエリーデザインもやってます。デザイナーは薬師さんという方。
 UN ROUTEというブランドのデザイナーで、新宿伊勢丹のメンズ館にも入ってる。
 家電やラジカセのデザインを応用して男性がしてもカッコイイものを」。

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空飛ぶ円盤をモチーフにしたような、まさにレトロフューチャーなデザインのカセットテープ。

--最近のシルバーアクセって、ホスト系・ビジュアル系のデザインが多いですね。

松崎「そうなんです。僕的にはもうちょっと大人でも楽しめるブランドを立ちあげたいなと。
 メカニカルでいながらスーツにも合うブローチとかカフス。
 さりげないところに昔の家電のインターフェイスのデザインを取り入れて、
 メカニカルでこだわりのあるものを作りたいですね」。


後編予告:家電だけではない、松崎氏のあふれる足立区への思いを一挙公開!
   
   
   
松山 貴之 [PROFILE]
   
   
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posted by ジャンク派 at 20:51 | Comment(3) | 【足立社長列伝】
この記事へのコメント
  
出たぁー!!
まさにジャンク派のイズム!

個人的にはレトロフューチャーなとこも、
びんびんきます。

ぜひ、松崎氏とは、ジャンク派でも組んで、
なにか仕掛けていきたいですね!

松山さん、よくこんないい取材先を嗅ぎ付けてくれました…!
   
Posted by ジャンク派 at 2011年10月10日 21:10
12日からの伊勢丹イベント、来週あたりに参戦しましょうか。
Posted by マツヤマ at 2011年10月12日 04:59
20年前のソニーのオーデオ、故障(リモコン不能、FM、他局の選択)など
修理して頂けるのですか?
Posted by 大橋剛雄 at 2012年07月27日 19:47
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