2011年12月12日

【足立社長列伝】 第8回 有限会社三幸 小沢頼孝社長 <後編>

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▼ 裏方に徹する小沢社長の哲学

数多くの大手企業のアクリル作品を手がけてきた三幸。

いわゆるOEMとしての仕事だが、
三幸はクライアントの名前を公表しないことをポリシーとしている。
その理由は以前に舞浜の世界的テーマパークと仕事をしたことがきっかけだという。


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「2007年に舞浜の仕事をしたときですね。
 そのデザインコンペがあって、
 最終的にうちの製品はフロリダの本部で承認をもらって販売されることになりまして。
 そこで1年間ストラップを作ってたんですよ。

 ものすごい数で、作った数は36万個くらいまでは覚えてたんですけど。
 間に企画会社が入ってまして、そこから
 『あそこの仕事は世界レベルの厳しさだから、
 それを手がけたならその技術力はどこに行っても通用する。
 足立区でやってるんだったら手を挙げて宣伝してもいいんじゃないですか』って言われて。
 確かにあそこの品質管理はものすごい厳しいんですよ、会社のトイレも検査されるくらい。
 
 作ったものが何十万個もあればひとつくらいは不良品があるんじゃないかと思って、
 契約が切れる1ヶ月くらい前に担当に確認したんです。
 そしたらうちの製品は1個も不良品がなかった」。

まさに足立区のものづくりの技術が世界に通用することを示した瞬間である。
それだけの技術力がこんな(と言っては失礼だが!)足立区の住宅地にある工場から生まれているとは、
近所を行き交う人のうち、どれくらいの割合の人が知っているだろうか。

「あそこの客は90%がリピーターなんです。
 そこで子どもたちがお年玉やお小遣いを貯めてお土産を買う。
 もしかすると買ってくれている人たちは、あそこで売っているグッズは
 白雪姫や7人の小人が作ってくれたという思いで買ってくれているんじゃないかと。
 だから、自分らが手を挙げて『足立区でうちが作ってますよ』とやっちゃいけない。

 うちの技術ではなく、あそこの人たちが素晴らしい努力をしているから売れているわけであって、
 それを勘違いしちゃいけないんじゃないかと。
 うちがやってることも素晴らしいんだろうけど、
 それを前面に立って販売している人の努力があって売れているわけだから。

 例えばうちの名前でやっているブランドなら
 『和風花』と名前を出してかまわない。
 でもOEMでやっているならそれは違うんじゃないのかなと。
 だから自分たちも切磋琢磨して自社ブランドで売れるようにしよう、
 というのが和風花カノセカイといったオリジナルのブランド。
 パリコレの商品も手がけてるけど、それは名前を出さないのが自分たちのポリシー」。

自分たちの名を表に出すことなく、縁の下の力持ちに徹してものづくりに打ち込む姿勢。
その高い技術力とぶれない信念こそが下町の製造業を支えているんだなと実感した瞬間であった。


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こちらは輪ゴムを飛ばす、いわば割りばしてっぽうのアクリル版。

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アヒルの姿をしたパスケース。ファンシーと言うよりも、このキッチュなノリが最高。


▼ ものづくりには時間と情熱をかけること

「大切なのは、デザインの力を信じてものづくりをすること。
 まず、線引きをしなきゃいけないのは機能優先かデザイン優先かということ。

 若い学生に伝えたいのは、最初はとんがった部分で突き抜けないと
 世の中に『私たちはこういう活動やってます』ということが伝わらないよ、と。
 そして、お金を稼ぐことと両立はしないよ、と。

 一番最初のスタートは『これもできる、あれもできる』という器用な顔を持ってないと。
 例えばAという商品に関してはデザイン性がすべて、
 もうひとつのBは量販でしっかりと稼いでいけるような。

 打ち合わせでも、お客さんの顔を見て『これができます、こっちもできます』と押してみて、
 相手が反応した方で一気に押していくっていう。それがビジネス。

 初めから『なんでもできます』と言ってしまっては差別化できないからダメ。
 それと、ものづくりには時間と情熱をかけること。
 今は女の子の方がそういう傾向が強いね。
 それで、製品ができあがった後に出てくるのが営業部長。

 最初から営業サイドで話すると、これいくらでできるの? ロットは? 
 もう少し安くならないの?とか、ぜんぜん商品にならない。
 みなで考えたものを形にするところからはじめないと」。


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カラフルなアクリル板の数々。


三幸のもとには企業以外にも、
オリジナルのアクセサリーを作りたいという個人からの連絡も多いという。

「幼稚園の先生から、フジロックで自分の作品を出したいけど作ってくれますか?という
 問い合わせもあったし、関西方面から来る人もいます。

 アクリルの工場はたくさんあるけど、うちみたいにWebで工場を公開してるところはほとんど無い。
 技術を盗まれるから。

 うちが中を公開してるのは、自分らの仕事はものづくりだけじゃなくて、
 アクリルのすばらしさを世界中の人に知ってもらいたいという思いがあるから」。

ちなみにロット数は1個からOKとのこと。気になる方は今すぐ三幸のサイトからGO!

もっとアクリルを世に広めたいという小沢社長。アクリルの魅力とは何かをストレートに伺ってみた。

「やっぱり色と輝きだろうね。

 うちの技術は溶けた樹脂を型に流し込んで作ったり、
 機械でカシャンカシャンと切り抜くんじゃなくて、
 刃物とかレーザーでひとつひとつ切り出して作るのが基本。

 1個から3〜10万個くらいまでかな対応するのは」。


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三幸の社内風景。若手スタッフが多く働いている。

  
▼ これからの日本の製造業の進路について

そして、三幸は第2回に紹介した安心堂の丸山社長が会長を務める足立区の異業種交流会
「未来クラブ」にも所属している。

「丸山会長は昔の町工場の親方みたいな人で。
 あれだけ多くの人をまとめるには人格がないと無理。
 未来クラブの会員が増加を続けてるのは、その結果じゃないのかなと。
 人柄ってのは最終的にどんな人でも、どんな国籍の人でも通じるからね。

 加入した理由は、やっぱりものづくりの人たちとの連携を取りたいから。
 よその工場はどんな思いで仕事してるのかなと。
 100社あれば100人の社長の思いがあることがわかりました。

 日本の製造業はものすごい細分化されていて、
 例えば材料屋、板金屋、磨き屋、仕上げ屋、メッキ屋なんかがいるけど、
 その中の突出した部分が海外に出てものづくりができなくなってしまっている。
 そういった連携を取りながら、これまで日本の零細企業はやってきたんだけど。
 どうやったらそれを食い止められるか。

 製造業は連携をとりながらものづくりしていくのか、
 大手企業のように自社完結型になるか。その2つしかない。
 うちはそれを両立させたいと考えてるの」。

足立区から新しい製造業のモデルが生まれるのも、そう遠くない先の話かもしれない。


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ナイスポーズの小沢社長。

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もう1枚。

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さらにもう1枚。


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デロンギのコーヒーメーカーをはじめ、社内にはいろんなものが置いてありました。


有限会社三幸(みゆき)
東京都足立区東和5-12-24
http://www.ann.hi-ho.ne.jp/m-co/
       
      
    
松山 貴之 [PROFILE]
   
   
   
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posted by ジャンク派 at 14:45 | Comment(0) | 【足立社長列伝】
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