2012年01月23日

【足立社長列伝】 第11回 セルロイド・ドリーム 平井英一氏 <前編>

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▼ 足立区に日本でただ1人のセルロイド人形職人がいると聞いて

つくばエクスプレスが開通しても、舎人ライナーが開通しても
相変わらず陸の孤島であり続ける足立区辰沼。

この住宅街に日本最後のセルロイド人形職人がいることを知る人は少ない。

セルロイド職人の家に生まれた平井英一氏は「セルロイド・ドリーム」の屋号で
セルロイド人形の「ミーコ」を作り続けている。

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「今から10年ちょっと前、97年くらいかな。
 おもちゃコレクター北原照久さんから1920年代のオールドミッキーの復刻を依頼されまして。
 それで金型から作ってね。
 セルロイド人形ってのはもう作られなくなって50年ほど経つから、
 それまで私自身も見たことなかったの。
 当時はうちの親父もまだ元気だったから『これいいね』と言ったら、
 親父が『まだうちに金型あるよ』って。それがミーコの金型だったの」。

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北原氏に依頼されて復刻したオールドミッキー。
現在のミッキーと違い白目が無く、パックマン型の目をしている。


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こちらが現在も生産されているセルロイド人形のミーコ。

平井氏がミーコの製作を始めたのは2002年。
50年前の当時の金型を使いすべてハンドメイドで製作されている。
その間、日本にセルロイド人形の職人は誰もいなかったという。

「昭和30年代、1960年代のはじめには人形は廃れて、玩具自体が廃れちゃった。
 それはセルロイドに代わるプラスチックが発明されて需要がなくなったから。
 昔はメガネなんかの日用品にもセルロイドは使われていたけどね。もうそれがだいたい50年くらい前」。


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50年以上前から使われているミーコの金型。

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金型にセルロイドを挟んで熱を加えるとこうなります。ややホラーチック。

筆者もこの取材時に初めてセルロイド人形に触ってみたが驚くほど軽かった。
よくテレビでブリキのおもちゃなどは懐かしおもちゃとして取り上げられるのを見るが、
セルロイド人形というのはなかなかにレアなものではないのか。

「セルロイド人形は軽いでしょ。若い人はビックリするの。
 軽いし手触りがプラスチックと違って優しい。素材の優しさって言うのかな。
 顔を描いたりしてると感じますね。全部手で描いてますから微妙に違うんですよ。
 松山さんは、セルロイド人形のことはぜんぜん知らない世代ですよね。
 セルロイド人形は女の子のおもちゃ。男の子はブリキのおもちゃでしょ」。

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▼ 珍しがられるものの、売り上げは……

日本で唯一のセルロイド人形職人ということだが、
平井氏は自身の後継者を作るつもりはないのだろうか。

「そんなには売れないんですよ。これってマニアックなものでしょ。
 たくさん作って、たくさん売れるものじゃない。
 自分のWebで出してるけど買う人はだいたい40代以上の女性。子どもじゃなくて大人。
 あそこの棚にいろんな衣装あるでしょ。
 これはWebやイベントで知り合ったいろんな人が作ってくれたの。
 次は3月のイベントに出るんだけど、人形関連のイベントは年に7、8回はありますよ。
 ミーコは一点モノだからホントに趣味でやってるし、
 骨董のセルロイド人形とも違うからみんな珍しがって反応はありますね」。


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棚にギッシリと並べられたミーコ。衣装は各地の知り合いが作ってくれるという。

ミーコの詳しい製作の流れはこちらの動画をぜひ見てほしい。


http://www.youtube.com/watch?v=I12nIyY-JeI
(製作風景は2:40〜)

金型での成形から、組み立て、目や髪の塗装といったすべての工程を平井氏が手がけている。

ミーコは裸の状態で1体3500円。洋服は別売りで1500円〜。

服はお客さん自身に着せてもらい、
より愛情を持ってほしいとの理由から裸で販売している。

販売サイトはこちら

「今販売してる洋服はWebで知り合った秋田の人にお願いして作ってもらってる。
 女性じゃないとできないんでね。今は3、4人の方にお願いしてるかな」。

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パッケージングされたミーコの衣装。


▼ 「ミーコはインターネットの申し子」

すべて一点モノのセルロイド人形ということで
ミーコに興味、関心を持ってくれる人も多いが商売として成立するほどの数が売れるわけではない。
なかなかシビアな現実である。

「初めはね、このオールドミッキーを作った縁で北原さんのお店にミーコを置いてもらってたの、
 半年くらい置いてもらったけどほとんど売れなかったんですよ。
 そしたら北原さんの会社の人に
 『平井さん、せっかくいいモノ作ったんだから自分のところで売ってみたら』って言われたわけ。
 それでまず人形のイベントに出したわけ。1回目は売れなかったね。
 何回か出てるうちにWebを見た人が来てくれてボツボツ売れるようになった。
 1年くらい経ってからかな。
 ひとりの人が買ってくれるとその人がサイトで紹介してくれて、それを見た人が私もほしいって」。

人形というコアな趣味を持つ人たちは、Webでのネットワークが非常に強い。
2002年の復刻以来、リアルな店舗ではほとんど売れずに、
Webを介してミーコを知る人が増えてきた現状を見て平井氏は
「お店に置いても売れない。北原さんほどの有名人のお墨付きでも売れなかったから(笑)。
 そう考えると、ミーコはインターネット時代の申し子なのかもしれません」と言う。

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メルヘンチックな衣装に身を包んだミーコ。

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ミーコも夏が待ち遠しい様子です。


▼ 区政80周年をお祝いするハチの衣装のミーコ

2012年の今年、区政80周年を迎える足立区。
それに合わせて蜂の姿をしたミーコを新たに製作した。

この区政80周年にちなんで、本連載で過去に紹介した企業もいくつかの記念グッズを製作している。

三幸の「区制80 周年ありがとう! ストラップ」、
J&Cコアの「千寿葱ねぎピクルス」が記念商品として紹介されている。

[関連] わがまち足立誕生80周年をお祝い!

「あれは区から電話が来てね。80年だから蜂のミーコを作ってほしいと依頼されて。
 それで岡山や横浜の人に協力をお願いして作ってもらったの。
 全部インターネットのおかげなんですよ。
 ミーコもネットがなかったらここまで続いてなかったですよ。
 北原さんのところで、ある程度売れたらやめにするつもりだったの。
 そしたら売れなくて、自分で売り始めたら面白くなって。
 だってお付き合いするのは全員女性ですもん。止められないですよ(笑)」。

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もし、初回の販売で満足のいく売り上げが出たら、
ミーコの生産をそこで終了させるつもりだったと語る平井氏。
現在、ミーコは1人での少量生産のため卸もせず、Web上での販売のみ。

「結果として売れなくてよかった。売れてたら止めるつもりだったから。
 洋服も手作りで作ってもらってるから大量生産もできない。
 だから逆に10年持ってる。これで大量生産をしたら一過性のブームで終わってたと思うんですよね」。


後編予告:セルロイド職人にしてファミレス評論家、平井氏の意外な素顔に迫る!     
      
    
松山 貴之 [PROFILE]
   
   
   
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posted by ジャンク派 at 17:43 | Comment(0) | 【足立社長列伝】
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