2012年02月20日

【足立社長列伝】 第13回 アライ園芸 新井宏治代表 <前編>

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▼ 農業の持つ3Kのイメージをくつがえした水耕栽培
   
アライ園芸は都内でも珍しい水耕栽培農家である。
足立区内で主に栽培されている野菜は小松菜、枝豆、ブロッコリー、ネギ、ほうれん草などであり、
特に枝豆は都内第1位の生産量を誇っている。

足立区は23区においても農業が盛んな地域であったが、
少子高齢化の余波を受け農家の数は著しい減少傾向にある。

筆者の家の近くにも昔は多くの畑があったが、
90年代以降その数はみるみる減少して駐車場やマンションに取って代わられる光景を見てきた。

水耕栽培とは土を使わず、肥料を溶かした水溶液で植物を栽培する方法である。
わかりやすいメリットとしては土を使わず手も汚れないので、
趣味に限れば都内のワンルームマンションでも可能。
限られたスペースを有効に活用して農業ができる。

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「うちは平成6年から水耕栽培を始めたんですが、きっかけは親戚が埼玉の三郷でやってたから。
今までの土で作ってた農業とはまるで管理が違うんですよ。
親戚だから、困ったことがあったら聞けばすぐに解決するだろうと、軽い気持ちで。
まあ、うちの若い者は土で作ってるときは嫌々言ってたんですが、
水耕栽培のプラントを見学に行って『やってみる』と言うんでそれから」。

そう語るのはアライ園芸新井宏治代表

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やはり、自分を含め農業に親しんだことのない人間にとっては、
土で手が汚れず、頻繁に屈んだりする必要のない水耕栽培は魅力的に映るようだ。
農業に興味を持つ若者が増えてきたとは言え、
やはり農業の「キツい、汚い、臭い」といった3Kのイメージは依然として根強くあるのだろう。

「カッコイイ農業というイメージあったんでしょうね。
農業をやる側の人間としてのメリットは、
土に植えるよりも早く、倍くらいの期間で栽培できるから非常に効率がいい。
農地の面積は拡張したいけど、都内では土地を買うのも借りるのも難しい」。

アライ園芸は2007年に全国農業コンクールの園芸部門で、
毎日新聞東京支局長賞、都知事賞に選ばれた経歴を持っている。
都内の限られた土地で効率よく栽培できる水耕栽培の取り組みが評価されての受賞であり、
23区の農家が受賞することは稀なことだという。

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水耕栽培の他のメリットとしては室内での育成が可能なので天候に左右されず、
計画的な栽培が可能だということ。
土の代わりに無菌の養液に浸しているので、大幅に農薬の使用量を減らすことができる。
そして、土壌環境にも左右されないので、通年の出荷も可能になる。

「1ヶ月後くらいに、足立区の教育関係のイベントがあって
うちに一般の人が見学に来る予定なんです。野菜工場を見に行こう≠ニいうキャッチフレーズで。
とりあえずは珍しい農法でもあるし、面白そうだということで。
役所の方も興味を持ってくれて、そういう動きが最近は出てきてるんです」。

「うちが作っているのは小松菜、水菜、サラダ菜、アイスプラントの4種類。
葉っぱものばっかりですね。実のなるものは作ったことないけど、
今使ってる養液でトマトを植えてみたら実は成らずに葉っぱばかりできちゃって。
あとは、セロリに今挑戦してるんだけどこれは難しい。
原因がわかんないんですけど、根が腐ってしまう。肥料配分が悪いと思うんですけどね、多分。
他の野菜は出ないのに、セロリだけに症状が出る。根が腐るから上の葉っぱも自然に腐っちゃう」。

トマトと言えばつい先日、脂肪燃焼効果があるとの論文が発表されたばかり。
日本各地のスーパーではトマトジュースを初め、関連製品が爆発的に売れ、
プチトマトフィーバーが巻き起こっている。

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足立区を初め葛飾区や江戸川区でも採れる小松菜。

「過去にも失敗はちょくちょくありますけどね。
夏と冬の種を取り違えてしまうと、まったく製品にならないんですよ。
初歩的な失敗としては、虫に食われたり病気に見舞われたり。
冬は病気も虫もほとんどないから、無農薬。
夏に使う農薬は通常の半分以下でしょうね。手間もかからないで冬はいいんですよ。
けれど、夏も冬もエネルギーは使うんです。冬には空気じゃなくて水を温める。
灯油とか重油でボイラーでお湯を沸かして循環させるので暖房費がかかる。夏は冷房費」。

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冬は鍋、夏はサラダに最適の水菜。浅漬けにしてもイケる。

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生でサラダにしても、サッと湯通ししておひたし風にしてもOKのサラダ菜。焼き肉を巻いても◎。

水耕栽培はただ水に植物を植えていればいいと言うものではない。
酸素欠乏にならないよう、常にポンプで酸素を送り込みモーターを使って循環させる必要があるという。

「金魚と同じですね。この1つのハウスを1個のポンプで水を循環させてるんですよ。
セロリもまた植えてるところ。肥料配分を変えましてね。
千葉で水耕栽培が盛んな地域があって、そこでもセロリはアウトだったって聞いたことがあるけど。
できないから辞めるのは簡単だけど、原因がわからないのは残念すぎる。
今まで失敗してきたからなんとか成功させたいなと。
販路はあるんですよ。セロリを求めてくる業者も。それに応えたいんだけど。
作り手とすると手がけたものはどうしても作りたい。
作れば売れるし、そんな難しいものでも俺は作れるということで挑戦したい。やってみたい」。

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一度は失敗したセロリ。新井社長のリベンジは続く。

アライ園芸の水耕栽培施設はだいたい900坪のビニルハウスが2棟。
その大きなプラントに水を循環させ、肥料を配合するのはかなり負担が大きいのではないだろうか。

「肥料は全部機械が入れてくれてますよ。
固形の肥料を水に溶かして、それを入れると見張りもしてくれて。
肥料の濃度が設定数値に満たない場合は自動的に入れてくれる」。

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これが肥料混入器。意外とクラシカルな外観。

アライ園芸の近くには広大な舎人公園もあり、
自然環境も豊かで農家数も比較的多かった地域である。
そんな舎人地区は2008年に舎人ライナーが開通してからの再開発により
大きく街の表情が変わってきている。

「農業の数はものすごく減ってますよ。舎人でも多分、2〜4件くらい。うちを入れて。
隣の古千谷でも農家は2、3件かな。入谷はまだ少し多い。10件くらいあるのかな。
昔はこの辺は舎人村という1つの大きな村だったんでね。
大地主さんが多かったのもあるんでしょうね」。


後編予告:足立区の新名物になる可能性を秘めたアイスプラントの魅力を徹底追求!
   
   
    
松山 貴之 [PROFILE]
   
   
   
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posted by ジャンク派 at 07:43 | Comment(0) | 【足立社長列伝】
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