2012年03月05日

【足立社長列伝】 第13回 アライ園芸 新井宏治代表 <後編>

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▼ アイスプラントを足立区の名物に

アライ園芸では水耕栽培をはじめる前は小松菜をメインに育てていたという。

「小松菜が多かったね。ほうれん草もやってましたけど。
サラダ菜は大昔、農業始めた頃専門に作ってました。
私の人生ではサラダ菜が一番長いかな? 20年くらい専門でやってましたから。
小松菜は足立、葛飾、江戸川でよく作られて、
特に江戸川の小松川が小松菜発祥の地って言われてますから。
最近では学校給食に区が推奨してくれまして、
地元産の小松菜を使うようにと学校側にお願いして。
うちでは7、8校を受け持ってるんですよ」。

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ズラリと並んだアイスプラント。表面にはキラキラとした塩分の結晶が付着しており、これが名前の由来となっている。

足立区としても区の食材を積極的に活用していこうという区産区消に力を入れているようだ。
そして、本連載にも登場していただいた安心堂の丸山社長も
アライ園芸のアイスプラントを区の名物にしていこうと絶賛している
つい先日の丸山社長のブログでも「野菜工場」と題したレポート記事を公開されている。

アイスプラントとはなにも付けなくても塩味のする野菜であり、
フランス料理の食材として注目を浴びている。
なぜ塩味がするのか? 
それは土壌の養分を吸収する性質を持っているためであり、
土に有害な物質が含まれている場合は一般の作物以上に吸収してしまうが、
水耕栽培であればその心配はない。
アフリカでは民間薬や石けんとして利用され、日本でも化粧品の原料にされるなど、
保湿成分や天然ビタミンに着目した新規素材として注目されている。
(以上、すべてウィキペディアから参照した知識)。

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「アイスプラントはまだ栽培してる面積が狭いんだけど、売れて売れて困るって言うならいっぱい作っちゃうね(笑)」。

そして、丸山社長のブログによるとアイスプラントは実に栄養に富んだ野菜で、
クエン酸にリンゴ酸、カルシウム、ピニトール、ミオイノシトールの他、
血糖値降下作用も持つピニトールや
中性脂肪、内臓脂肪の増加を防ぎメタボリックシンドロームに効果のある
ミオイノシトールも含有している。
他にも、ピニトールは肝機能障害の改善、白内障予防、
ミオイノシトールは動脈硬化及び脂肪肝を改善する効果もある。
さらには、パニック障害やうつ病など、精神疾患にも改善効果が期待できる。
クエン酸 及びリンゴ酸は、疲労回復に効果があり、
体内に溜まった乳酸を分解し、胃腸の状態を整える効果もあるという。

このように、身体にとってもいいこと尽くめのアイスプラント。
丸山社長が熱を入れるのもよくわかる。
足立区の名物食材と言えば、今のところ千寿葱がブランドを確立しているが、
そこに続く足立区発の野菜としてPRする余地は大いにありそうだ。
まだ一般的に知名度の高い野菜とは言えないので、
物珍しさもあってアイスプラント≠ニいうネーミングも新鮮に響くはず。
一度試食してもらえればそのほどよい塩味と独特の食感で、すぐにインパクトは伝わるだろう。
しかも、アライ園芸の近くには舎人ライナーの開通によって活況を呈している舎人公園がある。
水耕栽培で育てたアイスプラント≠ニ銘打って移動販売をしたり、
都内各地のファーマーズマーケットに出店したりと、
この辺はアイデア次第でいくらでも販路を開拓できそうだ。


▼ 水耕栽培は時代に則した農業の形

新井代表は普通の農業に比べて水耕栽培は雇用の面でも大きなメリットがあると話す。

「農家ってさ、大変なんだよね。土でやる農業はパートさんが使いにくい。技術を伴うんですよ。
作付けするのは機械が種まいてくれるし、機械を駆使して育てることはできるんですけど、
収穫が面倒なんですよ。どんな野菜でも収穫が面倒。
土から抜くのに土で作物を汚さないようにしないといけないから。
土まみれの手で触ってしまうと、触ったところが落ちないでしょ。
根元を揃えたり、束の大きさを均一にしたりしなければならない。素人じゃとても大変。
できることはできるんですけど、やっぱり大きさが均一にはならない。だからパートが使いにくい。
でも、うちは土を触ってないから、バーッと抜いていきまして、
パートさんには下の方についてる枯れ葉を取る作業と、目方を量る作業をやってもらってる。
水耕栽培をはじめる前からパートさんは使ってたけど、それは農家の人だった。
今はそういう人いなくなっちゃったから水耕で良かったなと」。

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アライ園芸では現在8名ほどの女性のパートを雇っている。
中には障害を持つ人もいるが、養護学校を卒業してから10年以上勤務している人もいるとのこと。

通年で作物の育成ができ、作業環境も普通の農業に比べてゆるやかな水耕栽培は
これからの時代にマッチした農業の形態とも言える。
現在、Webで「水耕栽培」と検索すると趣味でやる個人のための栽培キットが多数ヒットする。
パソナサブウェイのように大手企業も水耕栽培に進出して、
着実にこれからその市場は拡大していくと言えるだろう。

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減ってきているとは言え、23区では農家の多い足立区。
他に水耕栽培をやっている農家はいないのだろうか。

「私の近所ではいませんね。
15名くらいの農業関係のグループに加入してそこで親睦を深めてるんですが、
水耕栽培をやろうという人はいない。だって、初期投資費用が半端じゃない。
プラントを導入するのに1000uあたりで数千万円くらいかかるんじゃないかな。
それはビニルハウス抜きの価格。
ハウスじゃないと雨が入っちゃうから、それを含めるともっとかかる。3割UPくらいかな。
プラントを自分で作れればね。手間暇かけて。
地べたで配管してるもんだから、これは専門家にやらせないと。手慣れた人じゃないと難しいだろうな」。

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アライ園芸が使用しているプラントはカネコ種苗というメーカーのもの。
先日も千葉大学が福島県の小学校に水耕栽培のための施設を設置するなど、
被災地でこのような動きは広まっており、水耕栽培プラントのメーカーが
東京にあれば福島の農家にも説明しやすい≠ニいうことで、アライ園芸に営業に来ることもあるとか。

そして、農家と言えば良くも悪くも販路を農協頼みにしている事実がある。

「うちは市場専門だったけど、まあ、もとは太田市場の前身の神田市場。
今の秋葉にあったんだけど、それが引っ越して太田に行ったの。その神田市場専門だったんです。
今この辺の農家で販路を拡大しようと思う人はいないでしょうね。先入観で不可能だと思ってる。
だから私が展示会行こうよ、と誘ったってなかなか腰上げないんだよね」。

「先日も区役所に行って、産業振興課のあたりをうろうろしてたら、あちこちの職員から声かけられて。
2月18日の異業種交流会にも出たんだけど、他の人は役所との交流は少ないね。
うちが水耕栽培を教えてもらったところは販路を拡張するのが得意なの。
いろんな見本市や展示会に行ってね。忙しく巡って歩いているけれど。
この前もあだちメッセ≠ノ出たんですけど、農業は私ひとりでね。
私はおっくうな方なんだけど、農家の中だとうちはよそへ出て行く方なんだよな(笑)」。

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野菜は機械で袋詰めされて出荷される。スーパーでこのパッケージを見かけたらチェック。

現在、アライ園芸の野菜は西友(青井店、足立島根店、北綾瀬店、竹の塚店、赤羽店)、
シェルガーデン(自由が丘店)をはじめ、主に区内のスーパーに卸している。

「うちは直じゃなくて仲卸さんがいるんで、そこにお願いしてる。
でもやっぱりリスクを考えると、新しい販路はほしいね。
面倒くさいなどと言ってる場合じゃない、死活問題ですから」。

今後、新井代表は摘み取りによる野菜の直売も実現したいと考えている。
現在は現地に直接来てくれた人には販売をしているが、
大々的に宣伝はしていないのでこの場を借りて告知したいと思う。

アライ園芸の場所は舎人ライナー見沼代親水公園駅から徒歩10分ほど。
主に手がけているのは小松菜、水菜、サラダ菜、アイスプラントの4品種。
舎人公園からも徒歩10数分なので、ピクニックついでに脚を伸ばしてみてもいいかも。
念のため、事前に電話連絡を忘れずに!


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膝の上の猫はハルオ君。誰にでもよくなつく。

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凝視


アライ園芸
東京都足立区舎人3-4-3
03-3897-8819
  
   
    
松山 貴之 [PROFILE]
   
   
   
posted by ジャンク派 at 21:44 | Comment(2) | 【足立社長列伝】

2012年02月20日

【足立社長列伝】 第13回 アライ園芸 新井宏治代表 <前編>

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▼ 農業の持つ3Kのイメージをくつがえした水耕栽培
   
アライ園芸は都内でも珍しい水耕栽培農家である。
足立区内で主に栽培されている野菜は小松菜、枝豆、ブロッコリー、ネギ、ほうれん草などであり、
特に枝豆は都内第1位の生産量を誇っている。

足立区は23区においても農業が盛んな地域であったが、
少子高齢化の余波を受け農家の数は著しい減少傾向にある。

筆者の家の近くにも昔は多くの畑があったが、
90年代以降その数はみるみる減少して駐車場やマンションに取って代わられる光景を見てきた。

水耕栽培とは土を使わず、肥料を溶かした水溶液で植物を栽培する方法である。
わかりやすいメリットとしては土を使わず手も汚れないので、
趣味に限れば都内のワンルームマンションでも可能。
限られたスペースを有効に活用して農業ができる。

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「うちは平成6年から水耕栽培を始めたんですが、きっかけは親戚が埼玉の三郷でやってたから。
今までの土で作ってた農業とはまるで管理が違うんですよ。
親戚だから、困ったことがあったら聞けばすぐに解決するだろうと、軽い気持ちで。
まあ、うちの若い者は土で作ってるときは嫌々言ってたんですが、
水耕栽培のプラントを見学に行って『やってみる』と言うんでそれから」。

そう語るのはアライ園芸新井宏治代表

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やはり、自分を含め農業に親しんだことのない人間にとっては、
土で手が汚れず、頻繁に屈んだりする必要のない水耕栽培は魅力的に映るようだ。
農業に興味を持つ若者が増えてきたとは言え、
やはり農業の「キツい、汚い、臭い」といった3Kのイメージは依然として根強くあるのだろう。

「カッコイイ農業というイメージあったんでしょうね。
農業をやる側の人間としてのメリットは、
土に植えるよりも早く、倍くらいの期間で栽培できるから非常に効率がいい。
農地の面積は拡張したいけど、都内では土地を買うのも借りるのも難しい」。

アライ園芸は2007年に全国農業コンクールの園芸部門で、
毎日新聞東京支局長賞、都知事賞に選ばれた経歴を持っている。
都内の限られた土地で効率よく栽培できる水耕栽培の取り組みが評価されての受賞であり、
23区の農家が受賞することは稀なことだという。

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水耕栽培の他のメリットとしては室内での育成が可能なので天候に左右されず、
計画的な栽培が可能だということ。
土の代わりに無菌の養液に浸しているので、大幅に農薬の使用量を減らすことができる。
そして、土壌環境にも左右されないので、通年の出荷も可能になる。

「1ヶ月後くらいに、足立区の教育関係のイベントがあって
うちに一般の人が見学に来る予定なんです。野菜工場を見に行こう≠ニいうキャッチフレーズで。
とりあえずは珍しい農法でもあるし、面白そうだということで。
役所の方も興味を持ってくれて、そういう動きが最近は出てきてるんです」。

「うちが作っているのは小松菜、水菜、サラダ菜、アイスプラントの4種類。
葉っぱものばっかりですね。実のなるものは作ったことないけど、
今使ってる養液でトマトを植えてみたら実は成らずに葉っぱばかりできちゃって。
あとは、セロリに今挑戦してるんだけどこれは難しい。
原因がわかんないんですけど、根が腐ってしまう。肥料配分が悪いと思うんですけどね、多分。
他の野菜は出ないのに、セロリだけに症状が出る。根が腐るから上の葉っぱも自然に腐っちゃう」。

トマトと言えばつい先日、脂肪燃焼効果があるとの論文が発表されたばかり。
日本各地のスーパーではトマトジュースを初め、関連製品が爆発的に売れ、
プチトマトフィーバーが巻き起こっている。

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足立区を初め葛飾区や江戸川区でも採れる小松菜。

「過去にも失敗はちょくちょくありますけどね。
夏と冬の種を取り違えてしまうと、まったく製品にならないんですよ。
初歩的な失敗としては、虫に食われたり病気に見舞われたり。
冬は病気も虫もほとんどないから、無農薬。
夏に使う農薬は通常の半分以下でしょうね。手間もかからないで冬はいいんですよ。
けれど、夏も冬もエネルギーは使うんです。冬には空気じゃなくて水を温める。
灯油とか重油でボイラーでお湯を沸かして循環させるので暖房費がかかる。夏は冷房費」。

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冬は鍋、夏はサラダに最適の水菜。浅漬けにしてもイケる。

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生でサラダにしても、サッと湯通ししておひたし風にしてもOKのサラダ菜。焼き肉を巻いても◎。

水耕栽培はただ水に植物を植えていればいいと言うものではない。
酸素欠乏にならないよう、常にポンプで酸素を送り込みモーターを使って循環させる必要があるという。

「金魚と同じですね。この1つのハウスを1個のポンプで水を循環させてるんですよ。
セロリもまた植えてるところ。肥料配分を変えましてね。
千葉で水耕栽培が盛んな地域があって、そこでもセロリはアウトだったって聞いたことがあるけど。
できないから辞めるのは簡単だけど、原因がわからないのは残念すぎる。
今まで失敗してきたからなんとか成功させたいなと。
販路はあるんですよ。セロリを求めてくる業者も。それに応えたいんだけど。
作り手とすると手がけたものはどうしても作りたい。
作れば売れるし、そんな難しいものでも俺は作れるということで挑戦したい。やってみたい」。

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一度は失敗したセロリ。新井社長のリベンジは続く。

アライ園芸の水耕栽培施設はだいたい900坪のビニルハウスが2棟。
その大きなプラントに水を循環させ、肥料を配合するのはかなり負担が大きいのではないだろうか。

「肥料は全部機械が入れてくれてますよ。
固形の肥料を水に溶かして、それを入れると見張りもしてくれて。
肥料の濃度が設定数値に満たない場合は自動的に入れてくれる」。

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これが肥料混入器。意外とクラシカルな外観。

アライ園芸の近くには広大な舎人公園もあり、
自然環境も豊かで農家数も比較的多かった地域である。
そんな舎人地区は2008年に舎人ライナーが開通してからの再開発により
大きく街の表情が変わってきている。

「農業の数はものすごく減ってますよ。舎人でも多分、2〜4件くらい。うちを入れて。
隣の古千谷でも農家は2、3件かな。入谷はまだ少し多い。10件くらいあるのかな。
昔はこの辺は舎人村という1つの大きな村だったんでね。
大地主さんが多かったのもあるんでしょうね」。


後編予告:足立区の新名物になる可能性を秘めたアイスプラントの魅力を徹底追求!
   
   
    
松山 貴之 [PROFILE]
   
   
   
posted by ジャンク派 at 07:43 | Comment(0) | 【足立社長列伝】