2012年01月30日

【足立社長列伝】 第11回 セルロイド・ドリーム 平井英一氏 <後編>

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▼ 天然資源から生まれるセルロイド

ミーコを復刻させる前は、平井氏はセルロイド職人として
正月の熊手に付ける飾りの七福神や鯛などの部品、
縁日で売っているような漫画のキャラの塩ビのお面を作っていた。

ミーコの原料であるセルロイドは1ロット単位で購入するのだが、
枚数にすると60〜70枚、重さにすると130kgにもなるため
1度購入すると使い切るために数年かかるという。

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Very Cute!


「昔は人形以外にもいろいろ作ってたから使い切れるけど、
 今はミーコしかやってないから。1ロット消化するのが大変。
 大量生産すればすぐなくなるけど、少しずつしかやってないから1回頼むと何年も持つ。
 以前、新しい人形を作ろうと思って金型屋さんに相談したら、金型も高いんですよ。
 1型作るのに100万円くらいかかる。人形は胴体と手と足、3種類の型が必要だから300万円くらい。
 人形の値段にしたら1体が万単位の値段になっちゃう。
 ミーコはうちにあった昔の金型を使ってるから3500円の値段でできるんですよ」。

セルロイド1枚の大きさは畳一畳ほど。ここから40〜50体のミーコが作られる。
現在、平井氏は中国からセルロイドを購入している。

「今は中国から買ってます。昔は日本が世界最大のセルロイド生産国だったけど、
 需要がなくなっちゃったからね。
 日本のセルロイド製造機を中国に持って行ってそれで逆輸入してる。
 原料は綿と樟脳(しょうのう)。樟脳なんて若い人は知らないかな、昔は防虫剤として使ってた。
 セルロイドは綿と樟脳で天然の合成樹脂だから、石油から生まれたプラスチックとは違うの。
 手触りが違うでしょ。色も何色だってできますよ。赤でも白でも。顔料で染められるから」。


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これがセルロイド1枚。ニット帽を被った男性は近所のお友達の根岸さん。


日本が外貨を稼ぐ目的で、戦前の時代にはアメリカに大量のセルロイド人形を売っていた。
そのため、海外にも一部のマニアがいるという。

「日本が作る前はドイツやフランスにあったんだけど、日本に全部仕事取られちゃったから。
 それで日本が最後」。


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セルロイドの裁断機は実にクラシカル。平井氏によるとおそらく戦前からのものだという。


▼ 区内のイベントでは老若男女問わず大人気のミーコ

そして、平井氏はその日本で最後のセルロイド職人である。

「ただ、人形のイベントにミーコを出しても若者は来ないね。ねえ、根岸さん」。

根岸さん「ま〜ず見ない、興味がないね」。

「セルロイドってモノを知らないから。
 40〜50代の女性は子どもの頃身の回りに多少あったから。
 おばあさんは懐かしいと言ってくれるんだけど、高いので買ってくれない。
 子どものお小遣いで変える値段じゃないから。懐かしいけど高いからいいですって(笑)」。

そういったマニア向けのイベントはもちろん、
平井氏は区が開催するイベントにも積極的に出店してミーコをPRしている。

「去年の1月に区の郷土博物館でミーコのペイント大会をやったんですよ。
 老若男女、子どもから若い女性までたくさん来てペイントして、けっこう評判でしたよ。
 最初は1時間の予定だったんだけど、みんな夢中になって結局延長して2時間くらいやったの。
 面白かった。秋にはセルッピーというキャラのストラップを使ったペイント大会をやって。
 セルロイドのペイントは誰でも簡単にできるんですよ。
 今年の4月には舎人公園のイベントでやるかもしれない」。

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こちらがセルッピー。


昨年10月に荒川の河川敷で行われたミーコのイベントの様子はこちらから

また、現在「動画deあだち」では
ミーコをナビゲーターとしたコンテンツ「ミーコの細道」が制作されている。

このようにミーコは日々一歩一歩、足立区のマスコットキャラクターとしての地位を築いている。


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マツコ・デラックスをモデルにしたミーコ。
日本テレビ「マイノリティ・リポート」の出演を記念して、知人に作成してもらったという。



平井氏のサイトの売りと言えば、
その日常を淡々と綴ったブログ「ひよりみ日記」を忘れてはいけない。
その日の食事から、猫のエピソード、買い物の報告、ご近所さんたちとの交流についてなど、
ゆるく長く6年間ほぼ毎日更新されている。

以前、ミーコの金型で人形焼きを作ってみたという興味深い記事
(※ややホラー気味の画像に付き閲覧注意!)があったのでそれについて尋ねてみた。

「アレはお遊びだからね。やると金型が汚れちゃって大変なの。
 テレビの取材があってお遊びでやったけど、金型が深いから熱が上手く通らなくて焼けないの。
 人形焼きの金型は小さいからいいけど。今はブログが道楽みたいなものだからね。
 これだけは毎日やってる」。


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▼ 地場ファミレスにかける情熱

そしてもう一つ気になる記事と言えば、週末の大宮ドライブである。
なぜか、平井氏は週末になると誰に会うためか大宮まで車を飛ばして、
そこで昼食に入ったファミレスのメニューについて割と詳細に報告している。

平井氏は全国展開していないご当地ファミレス好き≠ニいう筆者と同じ趣味を持っていた。

「誰に会いに行ってるのかは、プライベートなことはあまり深く書かないようにしてるから(笑)。
 今年になって会いに行く相手が茨城の守谷に引っ越したから毎週そっちに行ってるの。
 おいしかったファミレスはかつ敏。この近くだと綾瀬にある。
 ご飯とかキャベツとか豚汁がおかわり自由でね。豚汁がおいしいから行くと必ず2杯飲むの。
 あとはステーキのブロンコビリーとか、
 埼玉にあるはいから亭って焼き肉屋」。

平井氏は見かけによらず焼き肉系、ハンバーグ系のファミレスが好きだという。

「そうですね、肉が好きですからね。あと、馬車道ってあるでしょ。ウェイトレスが袴着て。
 埼玉が本社ですよ。はいから亭も馬車道のグループです。
 今は、茨城の守谷周辺でファミレス探してるの。
 大手チェーンのお店はあるけど地場が少ないからね。
 茨城にはとんQってとんかつ屋さんがあるの。
 あとは、うどんのすぎのや
 また明日も行くんでなにを食べようか楽しみ。なによりランチは安いですから。
 この前もブログに載せたけど、区役所の14階にある展望レストランは安くていいですね。
 カツカレー食べて、一緒に行った女性は500円の日替わり弁当。すごいボリュームあったね」。

日本最後のセルロイド職人と、まさか地場ファミレスの話題で盛り上がるとは思ってもいなかった。


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お邪魔しました!



セルロイド・ドリーム
東京都足立区辰沼2-14-2
03-3605-7724
http://celluya.com/


    
松山 貴之 [PROFILE]
   
   
   
posted by ジャンク派 at 19:12 | Comment(0) | 【足立社長列伝】

2012年01月23日

【足立社長列伝】 第11回 セルロイド・ドリーム 平井英一氏 <前編>

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▼ 足立区に日本でただ1人のセルロイド人形職人がいると聞いて

つくばエクスプレスが開通しても、舎人ライナーが開通しても
相変わらず陸の孤島であり続ける足立区辰沼。

この住宅街に日本最後のセルロイド人形職人がいることを知る人は少ない。

セルロイド職人の家に生まれた平井英一氏は「セルロイド・ドリーム」の屋号で
セルロイド人形の「ミーコ」を作り続けている。

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「今から10年ちょっと前、97年くらいかな。
 おもちゃコレクター北原照久さんから1920年代のオールドミッキーの復刻を依頼されまして。
 それで金型から作ってね。
 セルロイド人形ってのはもう作られなくなって50年ほど経つから、
 それまで私自身も見たことなかったの。
 当時はうちの親父もまだ元気だったから『これいいね』と言ったら、
 親父が『まだうちに金型あるよ』って。それがミーコの金型だったの」。

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北原氏に依頼されて復刻したオールドミッキー。
現在のミッキーと違い白目が無く、パックマン型の目をしている。


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こちらが現在も生産されているセルロイド人形のミーコ。

平井氏がミーコの製作を始めたのは2002年。
50年前の当時の金型を使いすべてハンドメイドで製作されている。
その間、日本にセルロイド人形の職人は誰もいなかったという。

「昭和30年代、1960年代のはじめには人形は廃れて、玩具自体が廃れちゃった。
 それはセルロイドに代わるプラスチックが発明されて需要がなくなったから。
 昔はメガネなんかの日用品にもセルロイドは使われていたけどね。もうそれがだいたい50年くらい前」。


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50年以上前から使われているミーコの金型。

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金型にセルロイドを挟んで熱を加えるとこうなります。ややホラーチック。

筆者もこの取材時に初めてセルロイド人形に触ってみたが驚くほど軽かった。
よくテレビでブリキのおもちゃなどは懐かしおもちゃとして取り上げられるのを見るが、
セルロイド人形というのはなかなかにレアなものではないのか。

「セルロイド人形は軽いでしょ。若い人はビックリするの。
 軽いし手触りがプラスチックと違って優しい。素材の優しさって言うのかな。
 顔を描いたりしてると感じますね。全部手で描いてますから微妙に違うんですよ。
 松山さんは、セルロイド人形のことはぜんぜん知らない世代ですよね。
 セルロイド人形は女の子のおもちゃ。男の子はブリキのおもちゃでしょ」。

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▼ 珍しがられるものの、売り上げは……

日本で唯一のセルロイド人形職人ということだが、
平井氏は自身の後継者を作るつもりはないのだろうか。

「そんなには売れないんですよ。これってマニアックなものでしょ。
 たくさん作って、たくさん売れるものじゃない。
 自分のWebで出してるけど買う人はだいたい40代以上の女性。子どもじゃなくて大人。
 あそこの棚にいろんな衣装あるでしょ。
 これはWebやイベントで知り合ったいろんな人が作ってくれたの。
 次は3月のイベントに出るんだけど、人形関連のイベントは年に7、8回はありますよ。
 ミーコは一点モノだからホントに趣味でやってるし、
 骨董のセルロイド人形とも違うからみんな珍しがって反応はありますね」。


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棚にギッシリと並べられたミーコ。衣装は各地の知り合いが作ってくれるという。

ミーコの詳しい製作の流れはこちらの動画をぜひ見てほしい。


http://www.youtube.com/watch?v=I12nIyY-JeI
(製作風景は2:40〜)

金型での成形から、組み立て、目や髪の塗装といったすべての工程を平井氏が手がけている。

ミーコは裸の状態で1体3500円。洋服は別売りで1500円〜。

服はお客さん自身に着せてもらい、
より愛情を持ってほしいとの理由から裸で販売している。

販売サイトはこちら

「今販売してる洋服はWebで知り合った秋田の人にお願いして作ってもらってる。
 女性じゃないとできないんでね。今は3、4人の方にお願いしてるかな」。

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パッケージングされたミーコの衣装。


▼ 「ミーコはインターネットの申し子」

すべて一点モノのセルロイド人形ということで
ミーコに興味、関心を持ってくれる人も多いが商売として成立するほどの数が売れるわけではない。
なかなかシビアな現実である。

「初めはね、このオールドミッキーを作った縁で北原さんのお店にミーコを置いてもらってたの、
 半年くらい置いてもらったけどほとんど売れなかったんですよ。
 そしたら北原さんの会社の人に
 『平井さん、せっかくいいモノ作ったんだから自分のところで売ってみたら』って言われたわけ。
 それでまず人形のイベントに出したわけ。1回目は売れなかったね。
 何回か出てるうちにWebを見た人が来てくれてボツボツ売れるようになった。
 1年くらい経ってからかな。
 ひとりの人が買ってくれるとその人がサイトで紹介してくれて、それを見た人が私もほしいって」。

人形というコアな趣味を持つ人たちは、Webでのネットワークが非常に強い。
2002年の復刻以来、リアルな店舗ではほとんど売れずに、
Webを介してミーコを知る人が増えてきた現状を見て平井氏は
「お店に置いても売れない。北原さんほどの有名人のお墨付きでも売れなかったから(笑)。
 そう考えると、ミーコはインターネット時代の申し子なのかもしれません」と言う。

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メルヘンチックな衣装に身を包んだミーコ。

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ミーコも夏が待ち遠しい様子です。


▼ 区政80周年をお祝いするハチの衣装のミーコ

2012年の今年、区政80周年を迎える足立区。
それに合わせて蜂の姿をしたミーコを新たに製作した。

この区政80周年にちなんで、本連載で過去に紹介した企業もいくつかの記念グッズを製作している。

三幸の「区制80 周年ありがとう! ストラップ」、
J&Cコアの「千寿葱ねぎピクルス」が記念商品として紹介されている。

[関連] わがまち足立誕生80周年をお祝い!

「あれは区から電話が来てね。80年だから蜂のミーコを作ってほしいと依頼されて。
 それで岡山や横浜の人に協力をお願いして作ってもらったの。
 全部インターネットのおかげなんですよ。
 ミーコもネットがなかったらここまで続いてなかったですよ。
 北原さんのところで、ある程度売れたらやめにするつもりだったの。
 そしたら売れなくて、自分で売り始めたら面白くなって。
 だってお付き合いするのは全員女性ですもん。止められないですよ(笑)」。

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もし、初回の販売で満足のいく売り上げが出たら、
ミーコの生産をそこで終了させるつもりだったと語る平井氏。
現在、ミーコは1人での少量生産のため卸もせず、Web上での販売のみ。

「結果として売れなくてよかった。売れてたら止めるつもりだったから。
 洋服も手作りで作ってもらってるから大量生産もできない。
 だから逆に10年持ってる。これで大量生産をしたら一過性のブームで終わってたと思うんですよね」。


後編予告:セルロイド職人にしてファミレス評論家、平井氏の意外な素顔に迫る!     
      
    
松山 貴之 [PROFILE]
   
   
   
posted by ジャンク派 at 17:43 | Comment(0) | 【足立社長列伝】